UN-FINISHED.
February 24, 2015

神田日勝という画家がいた。北海道の開拓農民であり、僕が幼少期を過ごした町で生き、そして死んだ人物だ。
生前その画風は定まっていないと言われ、作品ごとに模倣やブレがあり、そのことが美術界において評価されない大きな理由だとどこかで読んだ覚えがある。
実際、生前の絵柄はマチマチだ。でも逆に言えば日勝は「これから」の画家であったとも言える。ここから独自の画風が確立されていったのではないだろうか。
だが日勝は32歳にして腎盂炎でこの世を去る。そりゃ画風定まってなくてもおかしくないよ。と41歳の僕は思う。
そんな日勝に独自の存在感、ミステリアス性を与えたのは遺作の存在だろう。
それは絶筆の作品で通称「未完の馬」と呼ばれる一枚の絵だ。これを描いている最中、日勝は亡くなっている。
下半身のない馬の姿はそれだけで人を惹きつけるインパクトを持っている。多くの人がその異型の姿に心奪われるはずだ。
だが冷静に見れば全身を描くにはキャンバスが足りていない。ここから板を足すつもりだったとしてもなにか違和感を覚える。
目の肥えた人ならこの状態こそが完成形だと思う、そんな絶妙なバランスがこの絵にはある。
この一枚の絵が僕をずっと長い間縛り続けている。
未完ゆえのオリジナル。未完であるからこそこの絵は日勝のアイコンとして使われ続けている。
「人生それすなわちすべて未完」
と達観するにはまだ早いが、ぼんやりそんなことを思うようにもなってからこの絵の見方が少し変わってきた気がする。
とはいえ「未完の原稿」は箸にも棒にもかからない。終わらせることからしか始まらないのが原稿だということを僕は痛いほどよく知っている。
ただの未完はいけない。
完成を繰り返しながらも人生という歩みにおいてそれがいつも未完であるならいい。
というわけでとにかく頑張って原稿を書き上げようと思う今日この頃である。
神田日勝公式サイト http://kandanissho.com


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